のように濁っていた。
 私が、呆然としている中に、彼は押入まで辿りつくとその戸を開けて、何か、がさがさと抱え出した。
『アッ……』
 到頭《とうとう》、私は小さい驚ろきの声を出してしまった。押入の中には美しい少女がいるではないか。
 彼はその少女を懐《なつかし》げに抱えると、又ベットに帰り始めたのであった。私は思わず椅子から腰を浮かせた。
(人形か――。人形だ)
 如何にもそれは、驚ろくべきほど精巧につくられた外国人形であった。一目見た時は、はっとするほど精巧な人形であった。私はフト彼の父の外遊を思い出した。
(あの外遊の御土産かも知れない……)
 ――私が、そんなことを考えている中にベットの上ではその人形ルミと、黒住との奇怪極まる悦楽が始まったのだ。
 黒住は、無惨にも人形の着物を最後の一枚までもはぎとってしまった。そして、ぽい、と私の目の前になげすてられた時、どうしたことか、私はその着物から、ほのぼのとした甘い少女の体臭を強く感じたのだ……。
 私の心は妖しく震えて来た。
(そんなことはない、人形だ)
 と思いながらも。
 然し私はその赤裸にされた人形の体全部に、点々とした、くちづ
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