、それを体の中に循環し、そしてともに消化酵素を持ち、呼吸をする、その生活状態はまったく共通なのだ」
「……そうですね」
川島は、この吉見という男が、一体何を話し出そうとしているのか見当もつかなかった。が、ただその熱心な話しぶりには充分に好意が持てた。
「……そうですね、太古には植物とも動物ともつかぬ生物があって、それから色々なものが次第に進化して来たのが今の世の中だ、ってことは聞いてましたが……」
「そう、その通り、まったくその通りなんだ、先ず最初にやがて植物となるべき微生物が今君が顕微鏡で見たようなもの――と、それらのように葉緑体も細胞膜も持っていない――つまりやがて動物となるべき――細胞体とが分れた、それは全歴史を通じての最大な分岐点といえるだろう。ここに於いて松と猿とが分れたんだ、人間と雑草とが分れてしまったんだよ、だがしかし全く別のものではない、進化の仕方が途中で分れてしまっただけなんだ。運動や感覚は動物だけのものではない、朝顔の花は夜あけとともに開く、だから植物だって運動をする。その上はえとりぐさ[#「はえとりぐさ」に傍点]の奴は濡れた紙片をつけてやると欺されて捉えるけれど
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