好で、並べられてあった。
「まあ一服して下さい、煙草を吸っても一向構いませんよ」
 吉見はそういいながら、不細工な椅子をすすめてくれた。
 眼の前の頑丈な実験台の上には、フラスコに入れられた緑《あお》いどろどろしたものが置かれてあった。それはさっきの沼の全面を占領していた青みどろのようであった。
 川島が、ほかに眼のやり場がなくて、それを見詰めていると、吉見は吉見で、それが彼の眼にとまったことを如何にも嬉しそうに
「これを知ってますか」
「いいえ。――植物ですか、小さな」
 そのあやふやな言葉にも、吉見は手を拍たんばかりによろこんだ。
「そうですそうです、植物です、じゃ、こっちを見て下さい」
 吉見は、何か培養器のようなものから、載物硝子《さいぶつガラス》に移したものを顕微鏡にかけ、川島をせきたてるようにして覗き込ませた。
 覗き込んだ川島は、ただ何か得体の知れぬものが伸びたり縮んだりして動き廻っていることしか、わからなかった。
「どうです、なんだと思いますか」
 吉見は、川島が眼を離すのを待ちかねたように顔を近づけて来た。
「さあ――」
「動物ですか植物ですか」
「さあ――」
 川島
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