ことだし、川島の知人の範囲にも一組はあるのだが、三つ児というのは見たこともないし、あまり聞いたこともない。けれど五つ児ということもあるのだから決して荒唐ではない、いや、現在のこの場の奇妙さを説明するとすれば、そう考えるより仕方がなかった。
それにしても、このそっくり同じな三人の少女と共に、こんな山奥で吉見という男は何を企んでいるのであろうか。
川島の困惑に満ちた、遣り場のない眼が、やっと吉見の顔に止ると、吉見はそれを待っていたかのように、胡麻塩の髭に埋《うず》まった口辺《くちべり》を歪めて、白々と笑った。
「……君は結論から先きに這入ってしまったのだよ、この有様は、君をひどく愕かしてしまったらしいね、左様、宝石がだんだんに磨かれて行ったことを知らずに、いきなり出来上ったものの輝きに愕いているんだ」
「…………」
川島は黙って吉見の顔を見詰めていた。返事が思いつかなかったのだ。
「よっぽどびっくりしているらしいね、まあいいさ一緒に来たまえ、すぐそんな疑問なんか棄ててしまうだろう」
そういうと、吉見はもと来た森の中に帰りはじめた。川島は黙って頷くと、下してあったリュックサックを片肩
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