だ、そしてそのなかのある波長のものが人間に眠り音波として作用するらしい――眠り病が、近代になって突然発生したという意味はこれでわかる、そしてこれを、×国の奴が、早くも大陰謀に悪用したんだ……」
「なるほど……」
 喜村は、感嘆したように頷いて
「しかし、そんなことがよくわかったね?」
「それは君、犬のお蔭だよ」
「犬の?」
「うん、昨日からの三つの例に、いつも犬がいた、そして、その時に限って犬が急に落着きがなくなったり騒いだりした、だから僕は、もう一度実験しようと思って二匹の犬を借してくれ、っていったんだけど、その前に今の騒ぎが起ったんで万事解決さ……」
「どうして、ゲンたちにはわかるんです?」
 美都子が口を挿《はさ》んだ。
「つまりね、耳がいいんですよ、人間にはとても聴こえない毎秒八万振動ぐらいの音まで、犬には聴こえるんです、だからあの眠り音波が唸り出すと、五月蠅《うるさ》くって仕様がないんでしょう、それでそのたびにワンワン吠《ほえ》て怒るんです……僕達には、何んにも聴こえないのに犬が騒ぎ出す、というのから逆に考えて超音波を思いついたんですよ、だから都会生活というのは、犬にとっては
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