休刊的終刊
シュピオ小史
蘭郁二郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)不拘《かかわらず》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)気息|奄々《えんえん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]
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「シュピオ」は本号で第四巻第三号を数えた。尤もこれは前身たる同人雑誌「探偵文学」の重ねた年齢を含んでいるのであって、そもそもの出発は昭和十年三月に出た「探偵文学」にある。この雑誌は当時の所謂探偵小説の小鬼共が、十三人で始めた小雑誌で第二号で十一人となり第三号では九人となり、つづいて八人の同志となってしまったにも不拘《かかわらず》、この八人で頑張って漸次紙数も増し、探偵小説の同人雑誌としては奇蹟的に平穏な好調のうちに第二巻第十二号まで続けて来たのであった。
 然し、この無事平穏ということは、言いかえれば微温的な、あってもなくてもいいような、つまり存在価値のないものとなってしまっていた。同人が疲れて来たのもその理由の一つであろうが、そのままで置けば一二ヶ月で煙のように影も形もなくなってしまいそうな状態にあったのだ。
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