て第二の争闘を計画していたかも知れぬ。……しかし悪いことは出来ぬ、丘子はあの悪魔の唄に誘われて喀血してしまった……ああなんという大変な間違いをしてしまったんだろう、彼女が僕に対して情熱を失ったと、思ったのは僕の大きな誤解であった。彼女はホントに体の具合が悪かったのだ、気分の悪いのを堪《こら》えているのが、狂った僕にはよそよそしくとしか写らなかったのだ。丘子は矢ッ張り僕を愛していてくれていたんだ、僕はそれを君に言いたかった――だが、その彼女を僕は殺してしまった。……もう書くのが面倒になった、この手紙を君が読む頃はもう僕はこの世にいまい、涯《はて》しない海原が、僕を待って騒ぎたてている。
では厳父、鉄造氏によろしく。
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[#地から1字上げ]青木雄麗
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読み終った私は、よろよろっとベッドに倒れた、そしてがたがた顫える手で薬台の抽斗から赤い包紙に包まれた催眠薬を三つとり出すと、一気にグイと呷《あお》った。いまにも目がくらみそうな、激しい興奮に、とても起きてはいられなかったのだ。
ザラザラっと薬が咽喉に落込むと、ツーンと鼻へ罌粟《けし》のような匂いが抜
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