蘇峰先生の『大正の青年と帝国の前途』を読む
吉野作造
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)些《いささ》か頭を
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ヤレ/\と騒ぐ
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所謂文壇に復活したる蘇峰先生は『時務一家言』に引続いて『世界の変局』及び『大正政局史論』を出し、更に去年の夏より筆硯を新たにして『大正の青年と帝国の前途』なる一篇を公にした。始め新聞に掲載されて居つた節には、どれ丈け世間の耳目を惹いたか知らないが、十一月の初め一部の纏まつた著書として公にさるゝや、非常の評判を以て全国の読書界に迎へられ、瞬く間に数十万部を売り尽したと『国民新聞』は云つて居る。蘇峰先生の盛名と『国民新聞』の広告とを以て、驚くべき多数の読者を得たといふ事は固より怪しむに足らぬけれども、而かも旬日ならずして売行万を数ふるといふのは、兎にも角にも近来稀なるレコードである。是れ丈け沢山の人に読まれたといふ事、其事自身が既に吾人をして之を問題たらしめる値打がある。況んや蘇峰先生の名は反動思想の些《いささ》か頭を擡《もた》げんとしつゝある今日に於て又
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