失望悲観しない。時代の変に応じて各種の改良施設を社会背景に加へ、其上に現代の青年を活動せしむるならば、必ずや先輩諸公の憂ふるところは大いに減ずるだらうと思ふ。現代の青年を鞭韃警告するは固より必要である。けれどもそれよりも必要なるは現代青年の活動を妨ぐる総ての社会的原因を除くことである。而して之れ実に先輩諸公の責任である。而して先輩は常に青年を責むるに酷にして、自家の保守的思想の満足の為めに社会的改革の断行を欲しない。少くとも之れを第二次に置くが故に、折角の親切な先輩の忠告にも、青年は動もすれば反感を感ずる。例へば学制問題に見よ。猫も杓子も帝国大学の門に集つて高等遊民が出て困ると言ふ。然しながら社会の制度並びに慣行は帝大出身者に多大の特権を与へ、私学を圧迫して殆んど之れに帝大と同等の機会を与へず、帝大出身者にあらざれば青年の志を満足する地位にありつけないやうにして居るではないか。更に之を軍制に見よ。兵隊の義務は国民として苟も光栄ある義務なりと称へながら、上流社会は公然兵役を免れ(上流社会が兵役を免れ得るやうに制度が出来て居る)偶々止むを得ずして兵役につけらるれば為めに著しく学業が妨げられ
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