ばならぬ筈だ。青年の志気頽廃の原因は必ずや外にある。其本当の源を正さゞるが故に、此等の文学が特に青年を累するのであらう。若し源をさへ正せば思想の上に多少危険なものでも尚又文学として之を鑑賞するに何んの妨を見ないのである。然るに肝腎の源を抛擲して罪を文学に帰するが故に、文学の士などは却つて余計に反抗して益々非国家的態度に出づるの現象を呈する。又も一つ押し詰めて云へば、今日の青年は成程先輩の眼から見れば犠牲的奉公の念が薄らいで居るかも知れない。少くとも彼等と同じやうな意味、同じやうな形式に於て忠君愛国を唱へないかも知れない。然しながら真に国家社会の文通の進歩の為めに尽して居る努力其物の総量は、果して先輩諸公の青年たりし時に比して遜色あるか何うか。先輩諸公の青年たりし時が独り志気旺盛にして、今日の青年が全然言ふに足らざる頽廃の淵に沈んで居るものであるなら、日本が今の如き地位を維持して居らるゝ筈がない。我々は固より現状に満足するものではない。西洋諸国の進歩発展の莫大なるに比較し、我国の前途は尚容易に楽観すべからざるものあるを思ふけれども、又明治年間の発達の跡を見て、少くとも抽象的に現代の青年に
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