り]

おもひやれ浪路を帰る老が身のわかれは死出のここちこそすれ

山の庵に誰待つ人はなけれども帰りてとらん新しき年

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その年の暮に。
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つくろはず檐の老木を門松にことなく年の暮るる庵かな

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明治二十六年の元且に。
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立ちかはる年の吉言《よごと》にみ仏の御名《みな》をとなへて祝ふ春かな

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桃花。
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桃の花したてる路を行けばかも垢つく衣《きぬ》も袖にほふらし

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大圓、照幢等の、老が身に事ふることのまめやかなるも嬉しく、はた仏の慈悲、天地のめぐみの深きをも喜びて、折折に詠める。
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家もなく功《いさを》もあらぬ老なれど子持《こも》たるゆゑに危げもなし

老が身を何かは思ひかこたまし子等うちよりて我を養ふ

おもしろや夢と現《うつつ》のなかぞらに又まぼろしのなぐさめも見つ

身に
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