こから3字下げ、1行20字組みで]
一乗寺の里に住みける冬。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]
板葺はあなかま音におどろきて鳥も立つまで打つ霰かな
[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
時雨二首。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]
晴れぬるか沖に青雲ほの見えてしぐれし風ぞ波に流るる
有馬山さわぐ印南野《いなの》の風《かざ》さきに笹原たたくむら時雨かな
[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
霜。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]
磯かげや朝日も知らずおく霜は汐のさすにぞ敢へず消えゆく
[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
雪三首。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]
見るかぎり八十島《やそしま》しろし薩摩潟沖縄かけてつもるしら雪
吹雪する黒牛潟《くろうしがた》の汐かぜに浪高からし船の寄りくる
葛城や時雨の雲の絶間よりほのかに見ゆる峰のしら雪
[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
明治二十五年二月五日、ふと老が身のおぼつかなさを思ひつめて痴《し》れがましく打咽び、世をも子等をも恨みなどしつつ、昼つ方より夕までに二百首ばかり詠みける中に。
前へ
次へ
全79ページ中60ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 礼厳 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング