見あきやせまし朝顔の花

秋風にこころほどけて藤袴ほころびにけり著る人なしに

[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
秋風三首。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]

草の花うつくしよしと啼く蝉の声もまじれる秋の初風

いたづらに過ぎにし世さへしのばれて秋風ふけば心さびしも

荻の葉におとづるるこそさびしけれ風は心の無しと思ふに

[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
雁四首。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]

かりそめの世とや知るらん秋風にかりかりと啼く天つかりがね

有馬山いなの古江に雨すぎて蘆間の月に雁のおちくる

秋かぜは肌《はだへ》に寒し水門田《みなとだ》に雁の来て啼く時ちかづきぬ

淡路の海朝霧ふかし磯崎を漕ぎ廻《た》みくれば雁ぞ鳴くなる

[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
失題。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]

著るきぬの裾も乱れず紐しめて袴の折目《をりめ》世は正しかれ

[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
家。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]

壁草《かべくさ》に藁ぬりこめて竹ばしら茅《かや》の屋根こそ住みよかりけれ

[#こ
前へ 次へ
全79ページ中59ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 礼厳 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング