れる時。
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繁糸《しげいと》のいとも苦しや世の中は長しみじかし心みだれて

人わざのしげきを捨てて身を安く世を過《すぐ》さんと求めぬはなし

身のあらんかぎり思はず仮初《かりそめ》の世にいつまでのうかれ心ぞ

たまたまに浮世の夢は見しかども心とむべき里だにもなし

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人に示す。
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何事もみな我からぞいささめに人を悪しとは言ひなくたしそ

人とわれ隔てごころの起る時おのれに告げよ道に惑ふと

天地の人も一つを隔てしてわれはごころに身をぞ過まる

わが物と何を定めん難波潟蘆のひと節《よ》のかりそめの世に

家あれば家をうれたみ田のあれば有るが歎きの種とこそなれ

田も家も無さを悲むうらうへに有れば歎きぬわが妻子《つまこ》まで

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相国寺荻野獨園老師の七十の賀に。
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老の陰《かげ》かくさで照せ法《のり》の月めぐみを有漏《うろ》の露にやどして

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倉田保之の七十の
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