《ひぐらし》の啼くこゑ聞けば秋ちかづきぬ

蝉の音に夏こそ残れ山窓はにほひすずしき葛《くず》の初花

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播津国住の江の遠里小野にまかりし時。
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露おけば白く涼しな住の江の遠里《とほざと》小野《をの》の草な刈りそね

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妙心寺中の蟠桃院なる稻葉宙方の身まかりけるに。
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六十路《むそぢ》あまり共に浮世を夢と見き君こそ先づは覚めて往にけれ

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山城国愛宕郡高野村の猪口徳右衛門は、若き頃より禅を修しけるが、身まかりければ、手向けつ。
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なきがらを世に打捨てて一つだに物見ぬ本《もと》つ身に帰りけん

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明治二十四年一月九日、西賀茂神光院なる覺樹老比丘の入寂したまへるに。
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かりそめの影なりながら法《のり》の月雲がくれこそ悲しかりけれ

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薩摩国より帰
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