にも似るか山ほととぎす
啼きさして山子規わがここだしのばく知らにいづち行きけん
ほととぎす汝は前《さき》の世の何なれや幾日《いくか》啼くにもあはれと我が聞く
世に知らぬみ山の月の涼しきに子規さへなぐさめて鳴く
ほととぎすあはれの鳥と言《い》ひつつも啼かねば待たれ啼けば悲しも
ほととぎす待たねど宇多の中山は必ず来啼く雨の夕ぐれ
世を捨てし老が耳にも聞く時は山ほととぎす涙ぐましも
ほととぎす物思ふ夜はわがこころ鳥さへ知るか常ゆけに啼く
ひとりゐて黙《もだ》もあらんと思へどもまた音づるる山ほととぎす
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洛東岡崎の里に住みける頃。
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避けたれど猶世の中か韓碓《からうす》のかせぎけぢかき岡崎の里
山越しの風を時じみわが小田の夕霧ごもりかりがね啼くも
はだれたる雪かとばかり見てぞ行く月の影ちる竹の下路
引板《ひだ》かけて早稲田守るべくなりにけり穂末におもる秋の初風
草の花さきて匂へど蜩《ひぐらし》は来啼けど野辺はさびしくなりぬ
むらがりし霧は谷間にしづまりてほのぼの白む秋の野の庵
秋風の身に
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