れから重くするや何ゆゑ

見るたびに花をあはれと思ふほど我身も人の思はましかば

わび人は世をひたすらにかこつかな世はまた我をいかに歎《かこ》たん

物おもひも苦みもなく片ゐざり匍ふみどり子の心ともがな

仕へたる君のこころを心にてわが身にあらぬ我身とぞ思ふ

報いずばわが物としもならざらん親のめぐみに成りし身なれば

まことなき心は言《こと》にあらはれぬ命かけても偽《いつはり》はせじ

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西行法師。
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鈴鹿山世をふりすてて妻子《つまこ》にもかへたる道に奥やありけん

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元政上人の遠忌に。
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分け入りし心や常に深草のかすみの谷の花に住むらん

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一乗寺の里に住みける頃、はた、歌の中山に移りて後も、年年に子規の啼くをめでて詠める、くさぐさの歌。
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山にゐて皐月待つ間はほととぎすわが庵にきて羽ならしせよ

ほととぎす初音なくやといたづらに今日も暮しつこの山の辺
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