かりける路にて。
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伊賀大和ふき来る春の山風に梅が香しみて霞む空かな

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おなじ時、笠置山をよぎりて。
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拝《をろが》めばたふとかりけり笠置山くすしき巌はみな仏《ほとけ》にて

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明治二十六年きさらぎの初、雪ふりける日、人人と修学院村道入精舎に遊びて、百首歌しける折。
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竹の雪たわわに積る葉末より落つるしづくは降るにまされり

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一乗寺の里に住みける頃。
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比叡の山霞のおくに声はあれど花をはなれぬ谷の鶯

萱《かや》むしろ芝生に敷きて花見つつ歌ひたのしむ身こそ安けれ

桜狩り山にうかると見し夢のさむるもおなじ花の木《こ》のもと

おぼろ夜の月には水も霞むらん蛙《かはづ》なくなり前の山の井

わが山の霞のおくに分け入ればあさる雉《きぎす》も山鳥も鳴く

山を近みをりをり雉《きぎす》山鳥の羽音のどけき老が庵かな

菜の花に
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