わづら》ふよし聞きて甚《いた》く打歎きしが、十一月二日夜|更《ふけ》て門叩くを誰かと問へば、寛の声なりけり。
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病には命換ふやとかなしみき生き顔を見る老のうれしさ

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除夜に、人の家に宿りて。
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今日年の暮るとも知らで宿るかな檐に来て啼く鳥と我とは

なさけある人のめぐみを命にて家に年せぬあはれ飢人《うゑびと》

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柳。
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時と散るもろさは風の咎《とが》ならでひとり流るる川柳かな

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高野川に近く住みける頃。
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雁来紅《かまつか》の花はまがきに匂ひ出でぬ雁も来啼かん薄霧のうへに

草の庵にしなへうらぶれながむれば涙は秋のものとして散る

わが庵は竹の柱もかぼそきに屋根もたわわに積《つも》るしら雪

行くさ来さ先づ目にかかる冬枯の霜にひと花にほふ撫子

盛りよりあはれは深し咲き残る霜の垣根の菊のひともと

有明の月の叩く
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