き世をばありと僻むはおもかげぞ風の吹きしくしら露を見よ
一人だにとどまるは無き世に住みて老いゆく命などか歎かぬ
喚びたまふ仏の船をたのまずば浮世の浪にくつがへらまし
引くいきも又つきかへす人の世に身にたもつべき我物は無し
うつそ身を魂のはなるる時やいつ離れて行くを何処《いづこ》とか知る
かばねこそ荒野の露に曝《さら》してめ霊《たま》の行方を知らでやはあらぬ
悟り見よ何に心をくるしめん己《おの》れある身と思はずもがな
仏あり法《のり》ありと説く夢さめて空《くう》にかへるぞ真《まこと》なりける
長き夜の眠といへど覚めぬればしばしの夢の間《ま》にこそありけれ
魘《おそ》はれて苦しかりしも覚めぬればかさねて夢を見ぬ世うれしも
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人の、如何に心を修めなばよろしき、と問ひければ。
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楽しきも憂きもつらきも世の中は心一つの置きどころから
道知れる人の心をこころにてわれはがほせぬ人ぞ貴人《うまびと》
鈍人《おぞびと》もさかしらせねば貴人《うまびと》ぞ貴人《うまびと》さびようたて僻《ひが》むな
身のま
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