世の中

骨あれば世にも逆《さか》ふを海にすむ水母《くらげ》しもこそうらやましけれ

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案山子。
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冬辺《ふゆべ》より春も笠きて立ちつくす山田の曽富騰《そほづ》花を守れかし

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春風三首。
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伏見山梅さく頃は加茂川の流れかをりて風吹きのぼる

打むれて蝶のしたふや梅が香を吹きゆく風の流れなるらん

心なく花ふきちらす風もあり小簾《をす》になごりを留むるもあり

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若き頃、洛東黒谷に借りずまひして。
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膝を容るる畳は五つ穴窓《あなまど》はふたつある庵に鶯を聞く

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そぞろありきして。
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墨染もよぼろも洲にはすずめどもたのむはおなじ加茂の河風

加茂堤《かもづつみ》川ふきのぼる風もよし松をわたらふ月夜もよろし

麻ごろもしめるも涼し夕立の風のなごりや濡れて吹くらん

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