わが身はなかりけり肉食《ししむらは》みて人となれれば

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おなじき六年、相州浦賀に異国のいくさ船わたりきて、世の中さわがしかりし折。
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聞きなれぬ国なればこそ駭けどその亜米利堅もおなじ日のもと

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若くて大和に遊びし折。
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和津《わつ》が野《の》に馬のりすてて青丹よし奈良路を近み徒歩《かち》ゆわれきぬ

ふるさとに芽ぐむ柳も浄御原《きよみはら》きよき昔の鞠場《まりば》なるらん

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夢三首。
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夢に見るその海山と見る我と一つとやせんあらずとやせん

有るは無く無きは見えつつ左右《かにかく》に面白きものは夢にぞありける

現《うつつ》とは何をか言はんおしなべて寝なくに人の夢は見るものを

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薩摩大隅をわたりありきて、煩はしき事ありし頃。
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笑めば笑む怒れば影も怒るなりうつる鏡に似たる
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