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越前国にまかりける夏、井出曙覽の家の会にて。
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夕立のなごり涼しき川の洲の闇に下《お》りゐて月を待つかな
涼しくもてる夜の月のかげ見れば衣《ころも》しめりて秋ちかづきぬ
世の上のさがなきことを外《よそ》にして杜鵑のみ聞くには如かじ
あやめ草はなたち花もほのぼのと匂ふ折よく啼くほととぎす
露おびて咲けるさ百合の涼しさに垣根見めぐる夏の朝かな
背にあまる麦生の中《なか》を垂髫児等《はなりら》が蛍おひゆく夏の夕ぐれ
水層《みかさ》まし巌浪たかし五月雨《さみだれ》のふる川柳根を洗ふまで
草にさす雨夜《あまよ》の月の薄明《うすあか》り蛍と見るは露にかあるらん
草の露ひるま涼しくきこゆなり風吹く窓のしづ機のおと
萱《かや》びさし間なくしづくの打つ音に涼しくなりぬ夏の夜の雨
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嘉永元年、父のみまかりける時。
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身を分けて幾世めぐみし父なれや別れの骨にしみて悲しき
親となり子と生れしはみ仏の国にみちびくめぐみなりけん
父母の外《ほか》に
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