》するぞ人にかはらぬ

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明治の御代をよろこび祝ひて。
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何事も面がはりする新世《あらたよ》に老いぬればこそ稀に遇ひけれ

四方の海浪の音《と》もなしわたつみの神も仕ふる君の御代かな

神南備《かみなび》の森の柏木《かしはぎ》かしこきが皆あらはれて守る御代かな

みたらしの流の清く世の中もかはらであれや禍事《まがごと》なしに

道ありて世をめぐみます天地にそむかずてこそ生かまほしけれ

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若き人人の、歌のことを問ひける折。
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歌は身のなぐさみにすな何事も事の眼前《まさか》の真ごころを詠め

事設《ことま》けて歌はつくらじ世の物の心にうつるままをこそ詠め

言の葉はつくらぬぞよき天地のすがたのままの歌はたふとし

大きなる歌の聖《ひじり》はいにしへも今も抂げぬをよしと誨へき

世の中の数《かず》には入らぬ言の葉も独ごつこそ楽しかりけれ

折ふしはうき世ごころの結ぼれを野山ながめて歌ひてぞ解く

人並のまねびも為得《しえ》ずしきしまの国
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