まばゆくもわが山躑躅《やまつつじ》花さきにけり

橘のかをれる庭は風ながらはた雨ながら塵ながら見ん

夢さめて清きみ山の蝉きけばかはりたる世のここちこそすれ

夕立は麓すぐれど高嶺よりあらしの払ふ宇多の中山

[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
折にふれて、み仏のめぐみのかたじけなさに詠める、かずかずの歌。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]

ひと枝の花を手向けん香る木を焚きてむくいんみ仏の前に

前《さき》の世に如何なるちぎり結ばれて斯かる光明《ひかり》に遇ふ身なるらん

み仏のめぐみに漏れて生れなば牛ならましを馬ならましを

わくらはに遇ひし御法《みのり》の花の香は聴きしめてこそ身ににほひけれ

知らでこそ仏をよそに思ひしか我も光明《ひかり》の中《うち》に住む身を

犬猫の身にも生れず人の世に御法《みのり》きけとて出《いだ》しましけん

忘れても仏はわれを放たじと聞く身しもこそ涙こぼるれ

昔出でしわがふるさとの都路に急がんためか年の老いゆく

罪おほき身もよき人と一つらに住ます蓮《はちす》のその誓《ちかひ》はも

数ならぬ身もみめぐみを念《おも》ふとき心すなはち仏とぞ聞
前へ 次へ
全79ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 礼厳 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング