はぬ花の塵もかぐはし
花はみな昨夜《よべ》の小雨にちりはてて朝晴《あさはれ》しろし宇多の中山
ほろほろと霞ごもりに山鳥の啼く音のどけき花の昼かな
山ふかき埴生《はにふ》の花をたまたまも訪ひし貴人《うまびと》内へと申せ
かなしさも忘るるばかり山寺の庭をきよめてちる桜かな
家ざくら散り過ぎぬれば鶯も臥処《ふしど》荒れぬと思ふらんかも
西に入る春の日かげはわが住める庵より低し宇多の中山
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子をあまた持てれど、皆遠き国にあれば、老の心細さに、折にふれて恨みかこつことも多かり。
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暑き日はわが子を思ひ老いはてて身の寒ければましてしのばゆ
子にまよふ親の耳には山にてもおなじ心の鳥の音ぞする
誰をかは頼まんうからやからにも疎《うと》まるるまで老いにけるかな
親と子のともに住めるも多き世に生きて別れて遠く隔つる
久方の天のはらからむつびあひて親を守《も》るこそうらやましけれ
遠く住む子等にも告げよほととぎす身のさびしさにその父は泣く
子と云へば老いては名だに恋しきを国へだつこそ恨なりけれ
子を持て
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