くは夢にかあるらん

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(寛いふ。この最期の二首は、父が枕のもとなる大きなる壷に、彌壽子が生けたる萩桔梗などの匂へるを見やりて詠み給ひけるなり。)
[#ここで字下げ終わり]

禮嚴法師歌集 完

[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
父君のはかなくなりたまへる前の日、御枕のもとに子等をつどへて、永き別の歌よめとのたまひければ、泣く泣くもきこえまゐらせける。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]

[#地から2字上げ]大圓
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もろともに仏の道をよろこびて後の世までも親子とや言はん
[#ここで字下げ終わり]

[#地から2字上げ]照幢
[#ここから2字下げ]
親といひ子といふも世のかり名にて入我我入のさとり楽しも
[#ここで字下げ終わり]

[#地から5字上げ]寛
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親といへばなほ人の世のわかれなりまた遇ひ難き仏とぞ思ふ
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
   訂正追加。
一、此集の印刷を終れる後丹後の加悦村に九十六歳になれる老媼某現存し、父の幼時を記憶し居りて、童名は長藏、元服して
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