梅原良三郎氏のモンマルトルの画室
與謝野寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)左隣《ひだりどなり》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぐん/\と昇つて行く。
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
僕は僕の下宿の路次の
僕の薄暗い穴から出た。
そして直ぐ左隣《ひだりどなり》の家の
硝子戸をそつと押して入《はい》つた。
階下の廊《らう》の左側《ひだりがは》の室《しつ》から
門番《コンシエルジユ》のお上《かみ》の顔《かほ》が僕《ぼく》を見《み》て微笑《ほヽえ》んだ、
僕の顔も微笑《ほヽえ》んだ。
僕は直《す》ぐ狭い中庭へ出た。
四方を高い建物で劃《しき》られて、
井戸の底へ落ち込んだやうな処だ。
正面に入口の石段があつて、
此中庭から此家の六層の階段が始まる。
僕は之を昇らうとする度に
何時も、入口の石段で
ちよいと軽く気を入れながら、
立ち止りもせずに
ぐん/\と昇つて行く。
階段を一つ曲《まが》る毎《ごと》に
狭い中庭へ向いて附いた硝子窓が
だん/\明るさを増して、
僕に地上からせり出しつつあると云ふ意識を
確
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