摘めりともなし百合の花聖書にのせて祷りてやまむ
くちなはの口や狐のまなざしや地のうへ二尺君は寵《ちやう》の子
よわき子は天《あめ》さす指も毒に病む栄《さか》えを祝へ地なる醜草《しこぐさ》
いもうとの憂髪《うきがみ》かざる百合を見よ風にやつれし露にやつれし (晶子の君に)
垣づたひ萩のしたゆくいささ水にはぢらふ頬をばひたしぬるかな
うけられぬ人の御文《みふみ》をなげぬれば沈まず浮かず藻にからまりぬ
くちぶえに小羊《こひつじ》よびて鞭ふりて牧場《まきば》に成りし歌のふしとる
木屋街は火《ほ》かげ祇園は花のかげ小雨に暮るゝ京やはらかき
世のかぜはうす肌さむしあはれ君み袖のかげをとはにかしませ
利鎌《とがま》もて刈らるともよし君が背の小草のかずにせめてにほはむ
いろふかくゑまひこぼるるこの花よたまひし人によく似たるかな
わが舞へる扇の風に殿《との》の火を百《もゝ》の牡丹のゆらぎぬと見る
いかならむ遠きむくいかにくしみか生れて幸《さち》に折らむ指なき (以下十首人に別れ生きながらへてよめる)
地にひとり泉は涸れて花ちりてすさぶ園生に何まもる吾
虹もまた消えゆくものかわ
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