よ君にふくませむわがさす紅《べに》の色に似たれば

里の夜を姉にも云はでねむの花君みむ道に歌むすびきぬ

紅梅にあわ雪とくる朝のかどわが前髪のぬれにけるかな

なにとなく琴のしらべもかきみだれ人はづかしく成れる頃かな

心なく摘みし草の名やさしみて誰におくると友のゑまひぬ

われ病みぬふたりが恋ふる君ゆゑに姉をねたむと身をはかなむと

髪あげて挿《さ》さむと云ひし白ばらものこらずちりぬ病める枕に

野に出でてさゆりの露を吸ひてみぬかれし血のけの胸にわくやと

世は下《した》にいかにも強ひようるはしき日知らで土鼠《もぐら》土を掘るごと

ぬる蝶のなさけやさしみ瓜畑のあだなる花もひとめぐりしぬ

雲きれて星はながれぬおもふこと神にいのれる夕ぐれの空

かがやかに燭《しよく》よびたまふ夜《よ》の牡丹ねたむ一人《ひとり》のうらわかきかな

かずかずの玉の小琴をたまはりぬいざうちよりて神をたたへむ (新詩社をむすび給へる初に)

指の環を土になげうちほゝゑみし涙の面のうつくしきかな

うるはしき[#「うるはしき」は底本では「うるはきし」]マリヤを母とよびならひわかき尼ずみ寺に年へぬ

誰がために
前へ 次へ
全33ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 登美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング