よ君にふくませむわがさす紅《べに》の色に似たれば
里の夜を姉にも云はでねむの花君みむ道に歌むすびきぬ
紅梅にあわ雪とくる朝のかどわが前髪のぬれにけるかな
なにとなく琴のしらべもかきみだれ人はづかしく成れる頃かな
心なく摘みし草の名やさしみて誰におくると友のゑまひぬ
われ病みぬふたりが恋ふる君ゆゑに姉をねたむと身をはかなむと
髪あげて挿《さ》さむと云ひし白ばらものこらずちりぬ病める枕に
野に出でてさゆりの露を吸ひてみぬかれし血のけの胸にわくやと
世は下《した》にいかにも強ひようるはしき日知らで土鼠《もぐら》土を掘るごと
ぬる蝶のなさけやさしみ瓜畑のあだなる花もひとめぐりしぬ
雲きれて星はながれぬおもふこと神にいのれる夕ぐれの空
かがやかに燭《しよく》よびたまふ夜《よ》の牡丹ねたむ一人《ひとり》のうらわかきかな
かずかずの玉の小琴をたまはりぬいざうちよりて神をたたへむ (新詩社をむすび給へる初に)
指の環を土になげうちほゝゑみし涙の面のうつくしきかな
うるはしき[#「うるはしき」は底本では「うるはきし」]マリヤを母とよびならひわかき尼ずみ寺に年へぬ
誰がために
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