ほととぎす山門《さんもん》のぼる兄のかげ僧服《そうふく》なれば袖しろうして
よき箱と文箱とどめていもうとは玉虫飼ひぬうらみ給ふな
この恋びとをしへられては日記《にき》も書きぬ百合にさめぬと画蚊※[#「巾+厨」、第4水準2−8−91]《ゑがや》に寝《ね》ぬと
水にさく花のやうなるうすものに白き帯する浪華の子かな
春の池|楼《ろう》ある船の歩み遅々《ちゝ》と行くに慣れたるみさぶらひ人
夏花は赤熱《しやくねつ》病める子がかざしあらはに歌ひはばからぬ人
伯母《をば》いまだ髪もさかりになでしこをかざせる夏に汝《な》れは生れぬ (弟の子の生れけるに夏子と名をえらみて)
行く春にもとより堪へぬうまれぞと聞かば牡丹に似る身を知らむ
妻と云ふにむしろふさはぬ髪も落ちめやすきほどとなりにけるかな
われに遅れ車よりせしその子ゆゑ多く歌ひぬ京の湯の山
夕かぜや羅の袖うすきはらからにたきものしたる椅子ならべけり
わが愛づる小鳥うたふに笑み見せぬ人やとそむき又おもひ出ず
かへし書くふたりの人に文字いづれ多きを知るや春の染紙《そめがみ》
われぼめや十方《じふぱう》あかき光明のわれより出で
前へ
次へ
全33ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 登美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング