日くれぬ
夕されば橋なき水の舟《ふな》よそひ渡らば秋の花につづく戸
母屋《もや》の方《かた》へ紅《あけ》三丈の鈴の綱《つな》君とひくたび衣《きぬ》もてまゐる
君やわれや夕雲を見る磯のひと四つの素足《すあし》に海松《みる》ぶさ寄せぬ
里ずみに老いぬと云ふもいつはりの歌と或る日は笑めりと思《おぼ》せ
きざはしの玉靴《たまぐつ》小靴《をぐつ》いでまさずば牡丹ちらむと奏《さう》さまほしき
恋しき日や侍《さも》らひなれし東椽《とうえん》の隅のはしらにおもかげ立たむ
ほととぎす岩山みちの小笹《をざゝ》二町|深山《みやま》といふにわらひたまひぬ
あやにくに虫歯《むしば》[#ルビの「むしば」は底本では「むしは」]病む子とこもりゐぬ皷きこゆる昼の山の湯
君によし撫でて見よとて引かせたり小馬ましろき春の夕庭
花とり/″\野分の朝にもてきたる十人《とたり》の姿よしと思ひぬ
七《なゝ》たりの美《び》なる人あり簾して船は御料《ごりやう》の蓮きりに行く
かしこうて蚊帳に書《ふみ》よむおん方にいくつ摘むべき朝顔の花
ふるさとやわが家《や》君が家《や》草ながし松も楓《かへで》もひるがほの花
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