のごと
李《すもゝ》ちる京の夕かぜ又も泌《し》むひととせ見たる美くしき窓
ゆく春をひとりしづけき思かな花の木間《このま》に淡《あは》き富士見ゆ
江戸川のさくら黄ばめる朝靄にわかれし人をえこそ忘れね
春雨に山吹うかぶ細ながれみどりこなたへ君をいざなへ (東の京より西の京の友へ)
秋の日のこがねにほへる遠木立《とほこだち》そこにか母のありかたづねむ
磯にして君を思ふに清き夜や歌とは云はじ浪に得し珠 (以下二首上総の海辺にて)
汐あむや瑠璃を斫りたる桂なし海松《みる》ぶさささとも額《ぬか》ふれにける
とほく行く身にたまはりぬ琵琶だきて秋の雲みる西のみづうみ
この世にはあらずと知りしかたらひをしづかに思ふ森かげの道
春うたふ小鳥追ひ打つ世と知らずあくがれ出でし花の木《こ》づたひ (以下拾首さることにふれて)
うるはしきゆめみごこちやこのなさけこの歌|天《あめ》の母にそむかじ
彼の天《あめ》を知らぬ土鼠《もぐら》の宮守《みやもり》にわが歌悪しと憎まれにけり
耳しひしひじりはわかきうぐひすのよき音《ね》は問はず籠《こ》に閉ぢてのみ
われ咀ひ石のものいふ世と知りぬつめたき
前へ
次へ
全33ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 登美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング