病じゃないかと思う、その点ですよ。どうですね。あんたもその患者の一人ということにしておいたら……」
「そうですわね、貴方の奥様が流行衣装に懸命になると同じような……」
「ハハハハ、ともかく私はあんたの身を案ずればこそ苦言も述べるので……」
「御親切様にいろいろと有りがとう存じます。いずれ暇をつくって拝聴に参りますからその節また……。私は、これから庶務で今自分の給料を頂かねばなりませんし、それに積立金もカードで計算しなければなりませんから、これで失礼します。」
 槇子は軽く頭を下げて足を廻転させた。
「おい! 前川さん、あんたは何て性急《せっかち》なんだ。私はまだ話を終っていないよ……」
「あら、まだお話がありますの、私についての御注意でしたらもう十二分に……」
「いや、私はもう何も云わんよ。お掛けなさい。もう十分ばかりいいでしょう。これ迄も折角私はあんたへ特別の目をかけてきとる。今更あんたのようなしっかりした人を他へやる気も起らんよ。どうだね、御希望なら、私がもう一度極力奔走してみてもいいが。それとも他にあんたの望みでもあるなら、その方へ世話してあげよう、新聞社なんかあんたの適任じゃな
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