反逆
矢田津世子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)崇《あが》められん
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)只|呆然《ぼうぜん》と
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「 小野牧師は」は底本では「「 小野牧師は」]
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1
「天にまします我らの父よ。願わくば御名の崇《あが》められんことを。御国の来らんことを。御意《みこころ》の天のごとく地にも行われんことを。我らの日用の糧を今日もあたえ給え、我らに負債《おいめ》あるものを我らの免《ゆる》したるごとく、我らの負債をも免し給え。我らを嘗試《こころみ》に遇せず、悪より救い出し給え……アーメン」
朝の祈りが、厳かに厳かに会堂を流れた。
罪に喘ぐ小羊達は、跪《ひざまず》き、うなだれた頭を指で支えて、聖なる聖なる父の御名を疲労《くたび》れる迄くり返した。
「聖歌 二十四番!」
会師が厳然と命令した。
信者達は慌てて頁をくり始めた。太い、細い声が、てんでんばらばらに弾けた。調子の外れた胴間声が、きわ立ってみんなに後れて焦《あせ》った。跛《びっこ》な
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