った。或真夜中、お松は子供達の手を曳いて、宛どもなく街を彷徨《さまよ》った。気力の脱け切った子猫のように、子供達は眼だけ光らせて従順《おとな》しく歩いていた。太い丈夫そうな松の木が逞しい腕を延ばしていた。併し其処迄行くには高い崖があった。レールが白く光っていた。だが汽車は仲々やってこなかった。河淵へ出た。温かい風が吹いていた。青い月の光りが、足元の水を深く見せていた。お松はやっと微笑した。その場所に辿りついた事を悦んだ。彼女の手は無意識に長男を突きとばしていた。
次に二人の子供を両側に抱えて、彼女自身が飛び込んだ。呼ばれて、眼を開いて、お松は、白い敷布の上にのびのびと寝ていた自分に気が付いた。撥ね上ろうと焦《あせ》った。両側には二人の子供が寝息を立てていた。お松は周囲を眼で探した。やさしい笑皺の中に自分を見守っている眼があった。が、彼女はもう一度廻りを探した。ケン坊は、上の子は一体何処へ行っているんだろう?――
聖《セント》ヨハネ教会の沢木教父は、慈しみ深い微笑《ほほえみ》で先ずお松親子を安心させた。人手がないから何時迄もいてくれるように、と彼の方から嘆願した。お松は肚《はら》の底
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