たのは羽も衰え何か億劫げだった。陸橋の下にトタンの大きな板があって、そのあわいが鳩の巣になっているらしかった。陸橋もトタン板もその下を走る汽車の煙で真っ黒になり、そんなところに巣がけしている鳩の姿があわれに見えた。
 さっきから危なっかしいトタンの端であちこちしていた二羽の鳩が、前後して線路に下りたかと思うと、すっぽかすようにすぐに一羽がトタンへ戻った。踵を返すといった慌てかたで残された一羽が追いかけたけれど、見向きもされない。どこまでも引き添い追って行く。身を寄せ嘴をこする。背にとまりかけては羽搏き出される。清子は何がなし眼を逸らした。
 霊泉寺温泉の宿に着いた頃は、さすがに姑も疲れていた。途中、長々と乗合に揺られてきたせいもある。しかし姑は湯に入るとすぐ元気になった。蛇口の湯でうがいをしたり、みんながするように濡れ手拭を頭にのせたり、清子に足を揉ませたりして上機嫌だった。
「ほら、見てけれせえ。足コの軽くなったこと……温泉は有難いもんだしな」
 姑は清子の前をしゃんしゃん歩いてみせ、もう夕闇のきている庭へ止めるのもきかず出て行ったりした。
 素朴な屋造りだった。宿屋というよりは、掃
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