た婦人がどれもそれ者[#「それ者」に傍点]であっただけに、おしもと気付いた夫人の愕きは大きかった。不意に、足元から火が燃えたったような遽しい心になって、おろおろと取り乱している自分に気付く。そのくせ、意地悪く澄んだ監視の眼が、おしもの立居を見のがさじと追うている。十九にしては大ぶりな体つきのおしもは、ぼってりと盛りあがった乳房が割烹着の上からあらわな形をみせて、それが、俯向いて息忙しく雑巾がけなどをするたびに、ブリブリとゆれてみえる。老夫人には、そのさまが何んともいえず厭らしく動物的なものに感じられる。顔をそむけ、唾を吐きたいような衝動に駆られる。けれど、不思議に眼だけがおしもの体を離れようとはせず、知らず知らずに八つ口から入った手が萎びたわが乳房を探り、骨々したわが胸を撫でてみる。そして、「老齢《とし》には勝てない」としみじみ自分へ云いきかせ、諦めさせようとするのだが、眼の前の活々《いきいき》としたおしもの体へ視線がいくと、不意に激しい妬心が頭をもたげてきて、それを圧し殺そうとする心から、夫人は常よりも穏やかな口調で、
「ほれ、そこに塵が残っていますよ。もういちど拭きなおして下さい」
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