派な西洋間である。壁には大きな額がかかっている。綺麗な飾り椅子があちこちに置いてある。高い大きな窓がいくつもいくつもあって、それにはみんな真っ白いレースのカーテンがかかっている。小模様の織目の細かい上等品である。ふんわりと揺れはためく。裳裾の房がパタパタと鳴る。揺れるカーテンにコスモスの花が咲いている。淡紅い今にも消えそうな花が、白い花むらの中にぽつぽつと咲いている。背中の赤ん坊がなかなか泣きやまない。まあるいおしりが下って、おぶい紐が肩に食いこんで、重ったるい。あやしながらコスモスの花の中を歩いて行く。
 行っても行っても花ばかりである。花の波がゆったりゆったりと揺れる。真っ白いところに淡紅いぽつぽつのあるコスモス模様のカーテンである。裳裾の房がパタパタと鳴る。すると、カーテンはふんわりと揺れはためく。
 夢の中の西洋間は、雑誌の口絵で見かけたことのあるえらい方のお邸のようでもあるし、工場にいたころ友だちに誘われて見た活動写真の中の場面のようでもある。その活動では背の高い素敵な西洋美人が伯爵の恋人と囁きかわすところがあったり、馬に乗って散歩するところがあったりして、今でも思い出すたん
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