か安らかな寝息をたてはじめた。枕のはしでかなぶん[#「かなぶん」に傍点]が忙しげに手をもんでいた。

 それから十二日目に、ぎんは卒中で死んだ。
 遺品を調べてみたら、金は五円の報国債券五枚を入れて、しめて百二十八円五十三銭あった。妙に思われたのは、これまで虫干しでも見かけたことのなかった六尺四方の豪華なレースのテーブル掛であった。



底本:「神楽坂・茶粥の記 矢田津世子作品集」講談社文芸文庫、講談社
   2002(平成14)年4月10日第1刷発行
底本の親本:「矢田津世子全集」小沢書店
   1989(平成元)年5月
初出:「文芸」
   1941(昭和16)年10月号
入力:門田裕志
校正:高柳典子
2008年8月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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