、どっと笑う。笑いながら娘たちは、
「お気の毒にねえ」
 と目顔でこっそり囁き合った。
「ねえ、神さまって、ずいぶん依怙贔屓があると思うわ」
 不意に寿女がむき[#「むき」に傍点]になってこう言い出すので、帰りかけていたものまでが惹かれてまた腰をおろしてしまう。
「若しかしたら、あたし、神さまの継っ子かもしれなくってよ。大きな荷物をおんぶさせられた揚句、きょうからまたお祭り[#「お祭り」に傍点]なんですもの。ねじり鉢巻に襷がけしたって間に合いあしないわ」
 女にだけ通じあう負い目の辛さがきて、聞いている娘たちはちょっと笑い出せない。
「荷物をおろして下さるか、お祭りを停めて下さるか、さあ、どっちですって、あたし、今朝っから強《こわ》談判をしているところなのよ」
 娘たちは声を立てて笑う。その笑い声の歇まないうちに、寿女はかぶせて尚も続ける。それでも帰りかけるものがあると、うろたえて奥へいって茶を掩れてきたり、通りまで駈けて行って、せいせい言いながらパンケーキだの今川焼[#「今川焼」に傍点]だのを奢ったりする。
 母親といるときでも、こうであった。母親が用達しに出かけようとするたびに、寿
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