ノ甚しく変形しゐたり。この損傷は煙突に押し込み、又引き出したる為めに生ぜしならん。喉頭は全く圧砕しありたり。腮《あご》の直下に数箇の爪痕《さうこん》及暗紫色の斑点ありき。これ指にて強く圧したるが為めに生ぜしものならん。顔は腫脹《しゆちやう》せる為め甚しき醜形を呈せり。両眼球は眼※[#「穴かんむり/果」、第3水準1−89−51]より突出しゐたり。舌は半ば噬《か》み切りありたり。上腹部に大いなる挫傷あり。恐くは膝頭にて圧したるものならん。本人の断定に依れば、レスパネエ家の娘は未詳の数人の絞殺するところとなりしならんと云ふ。母の屍体も又甚しく損傷せられたり。右上肢《いうじやうし》及右下肢のあらゆる骨は多少挫折せられたり。左脛骨《さけいこつ》及|左胸《さきよう》の諸肋骨は粉砕せられたり。その他全身に挫傷及皮下出血多く、一見恐るべき状態を示せり。此の如き損傷を来したるを見れば、膂力《りよりよく》ある男子ありて、手に棍棒、鉄棒、椅子等の如き大いなる、重き、鈍き器を取り、それにて打撃したるものと推測せらる。如何なる武器を以てすとも、女子の力にては此の如き加害をなすこと能はざるべし。母の首は検案の際全
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