れた。一しよに来たのは、兼て極めてあつた五人の友達である。君達は皆仮装をして、それを一輛の美しい馬車が満載して来た。そこで己は君達を別荘の所々《しよ/\》に連れて廻つて、あすの遊びの準備を見せた。あすの晩には、庭の岩窟《いはむろ》に蝋燭を焚いて舞踏会をして、それから鏡の広間で宴会をしようと云ふので、己は君達と種々《しゆ/″\》の評議をして、今宵は明かりの工合を試験して置くと云ふことになつた。己はレオネルロと臂を組み合せて鏡の広間に立つてゐた。レオネルロは笑ひながら仮面を扇のやうにして顔のほてりをさましてゐた。己は中央に吊る燭台の明かりをためすために、窓を締めて窓掛を卸すことを、家隷《けらい》共に命じた。真つ暗でなくては、明かりの工合が分からぬからである。窓を締め窓掛を卸して、蝋燭がまだ附かぬので、広間が一刹那真の闇になつた。己達はその中に立つてゐて、己は家隷共に明かりの催促をした。「早くしないか。いつまでも暗くしてゐては困るぢやないか」と云つたのである。その時突然己は或る冷やかな尖つた物が胸を貫いて、己の性命の中心に達し、己の口一ぱいに血が漲るのを感じた。
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