していますよ。
姉。それだけで沢山です。兎に角あなたは旧思想の方《かた》ではございませんのね。
学士。(微笑む。)それでは旧思想の人は生活していないと仰《おっし》ゃるのですか。
姉。(たゆたいつつ。)それは同じ生活しているといっても違いますわ。
画家。(外套《がいとう》を着、手に帽と手袋とを持ち登場。)さあ。行きましょう。
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(学士立つ。)
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姉。遅くなりはしなくって。
画家。なあに。四五分で行かれるのだから。
姉。(学士に。)そんなら、御機嫌宜しゅう。もっとお話が伺いたかったのですが、為様がございませんね。事によったらまたここで偶然お目にかかれるかも知れませんね。
学士。そんな偶然な事があっても、あなたは御迷惑ではございませんか。
姉。いいえ。どう致しまして。それに偶然というものもつまりは法則があって出来るのではございますまいか。
学士。それであなたは法則というものを尊《たっと》んでいらっしゃるのですね。
姉。ある法則には服従しますわ。言って見れば。
学士。言って見れば。
姉。言って見れば、友
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