動かずに、物を歎願するやうにパシエンカの顔に注がれてゐる。そのうちその目の中に涙が湧いて来る。そして白くなつた八字髭の下で唇がせつなげに震えて来る。
パシエンカは痩せた胸を手で押へた。そして口を開いて、目を大きく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つて、呆れて乞食の顔を見詰めた。「まあ。あんまり※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]のやうですが、あなたでしたか。ステパンさんでせうか。いえ。セルギウス様でせうか。」
「さうですよ。ですがあなたの言つてゐられるその名高いセルギウスではありません。わたしは大いなる罪人《つみびと》ステパン・カツサツキイです。神様に棄てられた、大いなる罪人です。どうぞわたくしを助けて下さい。」
「まあ。どうしてそんな事がわたくしなんぞに出来ませう。なぜあなたそんなにおへり下りなさいますの。まあ、兎に角こちらへ入らつしやいまし。」
セルギウスはパシエンカの差し伸べた手には障《さは》らずに、跡に付いて上つて来た。
パシエンカはセルギウスを上らせはしたが、どこへ連れ込まうかと思ひ惑つた。家は小さい。最初此家に来た頃は、ほんの物置のやうな
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