びた、皺くちや婆あさんである。堕落した飲んだくれの小役人マフリキエフの為めには姑《しうとめ》である。
 パシエンカは婿が最後に役人をしてゐた地方の町に住んで、そこで手一つで一家族の暮しを立てゝゐる。家族は娘と、神経質になつた、病身の婿と、孫五人とである。パシエンカの収入は近所の商人の娘達に、一時間五十コペエケンで音楽を教へるより外ない。勉強して一日に少くも四時間、どうかすると五時間も授業するので、一箇月六十ルウブル近い収入になる。それをたよりに、右から左へと取つたものを払ひ出して、その日その日を過しながら、いつかは婿が又新しい役目を言ひ付かるだらうと心待に待つてゐる。パシエンカはどうぞ婿を相当な地位に世話をして貰ひたいと、親類や知る人のある限り依頼状を書いて出した。セルギウスにも出した。併しその依頼状はセルギウスが草庵を立ち退いた跡へ届いた。
 土曜日の事である。パシエンカは乾葡萄を入れた生菓子を拵へようと思つて、粉を捏《こ》ねてゐた。これは昔父のゐた時代に置いてゐた料理人が上手に拵へたので、それを見習つてゐるのである。まだ奴隷制度のあつた時で、此料理人は奴隷であつた。パシエンカは此菓
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