子を拵へて、日曜日に孫達に食べさせようと思つてゐる。
 丁度娘マツシヤは一番小さい孫を抱いてゐる。この抱いてゐる子の外の四人《よつたり》の中で、上の方の二人は学校に往つてゐる。その二人は男の子が一人に娘が一人である。婿は昨夜寝なかつたので、昼寝をしてゐる。
 パシエンカも昨夕《ゆうべ》は大分遅くなつて床に這入つた。それは婿のだらしのない事に就いて娘が苦情を云ふのを宥《なだ》めなくてはならなかつたからである。パシエンカの目で見れば、婿は体が弱くなつて次第に衰へて行くばかりで、これから身を持ち直すことが出来さうにはない。幾ら娘が彼此苦情を言つたつて駄目である。そこでパシエンカは極力娘の苦情を抑へて、夫婦の間の平和と安穏とを謀つてゐる。パシエンカは生得《しやうとく》人の不和を平気で見てゐることが出来ない。人が喧嘩をしたつて、それで悪い事が善くなる筈がないと信じてゐるのである。併しそんな事を別段筋を立てゝ考へはしない。人の腹を立つたり、喧嘩をしたりするのを見てゐるのが厭なので、それを止めさせようとしてゐるばかりである。その厭さ加減は臭い匂や荒々しい物音や、又自分の体に中る鞭ほど厭なのである。

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