馬方が休んではこの蕎麦を食べるので、遂に「馬方蕎麦」と有名になってしまったのであります。
蕎麦屋を最新カウンタ式に
蕎麦切を食うには、椅子に腰をかけ靴ばきではおちつきがない。真の風味を味わうには、畳の上に座して静かに味わうに限ると前述したものであります。しかし一方においては、実際蕎麦切なり蕎麦麪を味わう真の店として、いたって古風な通人向きの座席の家もなければならず、また文化の進歩した今日のことでもありますから、大衆向きに椅子に腰をかけて簡単に食べられる店も必要と存じます。しかし今日の蕎麦屋の大多数を見るに、これに反し表がまえと内部は異なり、内部は蕎麦屋ともつかず、またカフェーともつかぬ家が多く、少し町の変わった方面の蕎麦屋に入ってみるに、明治初年のそのままの店がまえの家さえあるようで、こんな家に限って客席に蕎麦道具を並べたり、またその席で出前の仕度をするなど、時によるとそこで葱をこつこつ刻んだり、大根をおろしたり、そのうえ調理場といわず客席といわず、またひどいのになると、釜湯の上を油虫がぞろぞろはっているというような不潔さであります。その一例として著者は昨年の初夏の頃でありました
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