書類の正確な系統さえ念頭に置かなかったように見える。彼は、或は彼等は、神国日本の男子にとって最も無邪気で自然であった思索形式そのままを、民族精神のよき標本のように、書目録の上に現しているのである。
彼等は、第一門に敬神、釈教を区分した。第二門に政書、職官、礼度、奏議、教育。第三門に天文、数学、博物学、医学、兵学、農学。そして、第四門に文学美術、音楽。第五門、編年、家記、伝記、考証、地理。第六門に叢書、類書等を総括している。漢書之部も、第一門が四書、五経や孝経、儒家、諸子、西教等を包括している。
今日の図書館員の目から見れば、此那大ざっぱな、まとまりのない目録は稚拙の極で、小規模の箇人蒐集をまとめる役にも立たないように思えるに違いない。けれども、私にこの部門の配列の順序その他は、何となく分業以前の人間の暖さ、正直さ、真実さのほとぼりを感じさせる。はっきり、彼等が生きて行く上に何を第一義に感じていたかと云うことが見える。幼稚であり、未開であるにしろ、生活にこれが第一、というのを把持していた、いようとした跡が見える。
今日、私共の上野図書館は、遙に進んだシステムによって管理されている。
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