されたものである。四六版、三百十二頁に、十行ならびの大きな活字で書名、著者、年号、冊数が掲載されてある。
これは、明治八年いよいよ書籍館が独立して旧大学内大成殿に仮館を定め、九年、毎日「午前第九時ヨリ午後第十時ニ至ルマデ内外人ノ覧閲ヲ許シ覧閲料ヲ収メス」と云う規則が出来てから編輯されたらしい。そして、「明治以前ノ著訳出版ニ係ルノ書名及ビ海外新旧出版ノ書名ヲ輯ス」とある。
震災後の帝国図書館は知らないが、それ以前でも、上野の図書館は決して愉快なところでもなければ、図書館として充分利用出来る便利な処でもなかった。
索引や蔵書の或る部門の不備さ等は云わないでも、私には、あの雰囲気――役所くさい、うるおいのない調子だけで親しみ難かった。簡便に行わるべき書籍の出納場が、あんなに高い、絵にある閻魔の大机のようなのなどは寧ろ愉快な滑稽だ。閲覧室内を監督するようにと云う意味もあるのだろうが。
この書籍館書目について、私の面白いと思ったことは、編輯ぶり――書籍整理の方法が、ちっとも近代の常識である図書館学に煩わされていない点である。ちょん髷を剪ったばかりのライブラリアンは、いろは順もABC順も、
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